Make.comでWebhook×Slackの初シナリオを動かす
Make.comのアカウント作成からWebhookトリガーとSlack通知を組み合わせた初シナリオ構築まで、初心者向けに丁寧に解説します。
「業務を自動化したいけど、どこから始めればいいかわからない」——そう感じている方は多いのではないでしょうか。 Googleフォームの回答を自動でメール通知したい、外部APIからデータを取得してSlackに流したい、でも「プログラミングの知識がないと無理では?」と諦めていませんか。
Make.com(旧Integromat)は、そうした自動化をブラウザだけで実現できるノーコード/ローコードのワークフロー自動化サービスです。 プログラミング不要で数百のアプリと連携でき、視覚的なシナリオエディターで自動化フローを組み立てられます。
この記事では、Make.comのアカウント作成から基本概念の理解、そして実際にWebhookトリガーとSlack通知を組み合わせた「初めてのシナリオ」を動かすところまで、初心者の方でも迷わないよう丁寧に解説します。
Make.comの基本概念:4つのキーワードを理解する
Make.comを使い始める前に、4つの重要な概念を頭に入れておきましょう。 この4つを押さえるだけで、ダッシュボードやエディターの見え方がまったく変わります。
シナリオ(Scenario)
シナリオ とは、自動化フロー全体のことです。 「Aが起きたらBをして、最後にCを通知する」という一連の処理をひとまとめにしたものをシナリオと呼びます。 Make.comでは、このシナリオをビジュアルエディター上で組み立てていきます。 プロジェクトの種類や用途に応じて、複数のシナリオを作り分けて管理することができます。
モジュール(Module)
モジュール とは、シナリオを構成する個々の処理ブロックのことです。 「Webhookでリクエストを受け取る」「テキストを整形する」「Slackにメッセージを送る」など、それぞれの処理がひとつのモジュールに相当します。 複数のモジュールを矢印でつなげることで、ひとつのシナリオが完成します。 モジュールは500種類以上のアプリに対応しており、GmailやNotion・Stripeなど主要なサービスは標準で用意されています。
オペレーション(Operation)
オペレーション とは、モジュールが実行された回数のことです。 無料プランでは月ごとのオペレーション数に上限が設定されているため、シナリオを設計するときには消費数を意識しておく必要があります。 1回のシナリオ実行で3つのモジュールが動いた場合、3オペレーション消費します。 オペレーション残量はダッシュボード上部のプログレスバーからいつでも確認できます。
コネクション(Connection)
コネクション とは、SlackやGoogleなど外部サービスとの接続情報(認証情報)を管理する仕組みです。 一度コネクションを作成しておくと、複数のシナリオから再利用できます。 APIキーやOAuthトークンが安全に保存されるため、毎回ログインし直す必要はありません。 コネクションは左サイドバーの「Connections」メニューから一覧で管理できます。
アカウント作成とダッシュボードの確認
サインアップの手順
まず、Make.comの公式サイトからアカウントを作成します。 手順は以下のとおりです。
- Make.com の公式サイトにアクセスする
- 「Get started free」ボタンをクリックする
- メールアドレスとパスワードを入力して登録する
- 確認メールのリンクをクリックして認証を完了する
Googleアカウントや GitHubアカウントでのソーシャルログインも利用できますが、メールアドレス登録が最もシンプルです。 登録後は無料プランが自動的に適用されるため、クレジットカードの入力は不要で今日からすぐに使い始められます。
ダッシュボードの構成
ログイン後のダッシュボードは以下の構成になっています。
- 左サイドバー :シナリオ・テンプレート・コネクション・チームへのナビゲーション
- 中央エリア :シナリオ一覧と最近の実行履歴
- 右上ヘッダー :オペレーション使用量の確認とプランのアップグレードボタン
最初に確認しておきたいのは、左サイドバーの「Scenarios」です。 ここが、自動化フローを作成・管理するメインの画面になります。 「Templates」には、よく使われる自動化のひな形が多数用意されているため、参考にするとシナリオ作成のヒントが得られます。
最初のシナリオを作る:Webhook→整形→Slack通知
ここからが本題です。 「外部からWebhookリクエストを受け取り、JSON内のデータを整形してSlackに通知する」という、シンプルかつ実用的なシナリオを一緒に作っていきます。 このシナリオはサーバーアラートの通知、フォーム送信の受信確認、外部APIからのイベント処理など、様々な場面に応用できます。
ステップ1:新しいシナリオを作成する
左サイドバーの「Scenarios」をクリックし、右上の「Create a new scenario」ボタンを押します。 空白のキャンバス(ビジュアルエディター)が開き、中央に「+」アイコンが表示されます。 この「+」アイコンをクリックすることで、最初のモジュールを追加できます。
ステップ2:Webhookトリガーを設定する
「+」アイコンをクリックすると、モジュール検索のダイアログが表示されます。 検索バーに「Webhook」と入力し、「Webhooks」アプリの中から 「Custom webhook」 を選択します。
Custom webhookモジュールを選ぶと「Add」ボタンが表示されます。 クリックすると、このシナリオ専用のWebhook URLが発行されます。
https://hook.eu2.make.com/xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx
このURLが、外部システムからPOSTリクエストを送る送信先になります。 URLはシナリオごとにユニークで、後から変更することはできません。 セキュリティ上の理由からURLは外部に漏れないよう管理してください。
次に、「Determine data structure」ボタンをクリックします。 Make.comは受け取ったJSONの構造を解析し、後続モジュールでフィールドを参照できるようにします。 テスト用のリクエストを別のターミナルから送ってみましょう。
curl -X POST https://hook.eu2.make.com/xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{
"user": "田中太郎",
"message": "サーバーのCPU使用率が90%を超えました",
"severity": "high"
}'
リクエストが届くと、Make.comがJSONの構造を自動解析し、user・message・severity の各フィールドがマッピング可能な変数として認識されます。
「Successfully determined」という旨のメッセージが表示されれば、このステップは完了です。
ステップ3:メッセージを整形する
Webhookモジュールの右側に表示される「+」ボタンをクリックして、次のモジュールを追加します。 検索バーで「Tools」と入力し、「Set variable」 を追加します。
変数名を formatted_message とし、値のフィールドに以下の内容を入力します。
【アラート通知】
担当者:{{1.user}}
内容:{{1.message}}
重要度:{{1.severity}}
{{1.user}} はWebhookモジュール(1番目のモジュール)の user フィールドを参照するテンプレート式です。
{{モジュール番号.フィールド名}} という記法がMake.comの基本で、モジュール間でデータを受け渡す際に使います。
この式を使って複数のフィールドを組み合わせた文字列を組み立てることが、Make.comシナリオ設計の中核技術です。
ステップ4:Slackにメッセージを送信する
次にSlackモジュールを追加します。 Set variableモジュールの右の「+」をクリックし、検索バーで「Slack」と入力します。 表示される候補から 「Create a message」 を選択します。
初回はコネクションを設定する必要があります。 「Add」ボタンをクリックすると、Slackの認証画面(OAuth)にリダイレクトされます。 ワークスペースにログインし「許可する」をクリックすれば、コネクションが作成されて自動的にMake.comの画面に戻ります。
コネクションが作成されたら、以下のフィールドを設定します。
- Channel :通知を送りたいSlackチャンネルを選択(例:#alerts、#general)
- Text :
{{2.formatted_message}}と入力して先ほどのSet variableの値を参照する
設定が終わったら「OK」ボタンをクリックして保存します。
ステップ5:シナリオを実行してテストする
シナリオ画面の下部に表示される「Run once」ボタンをクリックすると、手動で一度だけシナリオを実行できます。 Webhookが待機状態に入るので、先ほどと同じcurlコマンドを実行してリクエストを送ります。 正常に動作していれば、設定したSlackチャンネルに以下のメッセージが届きます。
【アラート通知】
担当者:田中太郎
内容:サーバーのCPU使用率が90%を超えました
重要度:high
各モジュールの上に処理件数(緑の丸数字)が表示されれば成功です。 シナリオを本番稼働させるには、画面左下の「Scheduling」スイッチをオンに切り替えます。 Webhookシナリオの場合はスイッチをオンにするだけで、外部からリクエストが届き次第、自動的にシナリオが実行されるアクティブ状態になります。
Make.comとn8nの使い分け
業務自動化ツールとして Make.com と並んでよく比較される n8n との違いを整理しておきましょう。 どちらを選ぶかによって、開発の進め方や運用コストが大きく変わります。
Make.comの強みと弱み
Make.comの最大の強みは、ブラウザだけで完結するSaaSである点です。 インフラの構築や管理が一切不要で、アカウントを作成したその日から使い始められます。 視覚的なデータフローが見やすく、複数のモジュール間でデータがどのように流れるかを直感的に把握できます。 公式のインテグレーションが充実しており、数百のアプリと標準コネクターで接続できます。
一方、弱みはオペレーション数の消費モデルにあります。 高頻度のトリガーや処理件数が多いシナリオでは、無料プランのオペレーション上限に達しやすく、有料プランへのアップグレードが必要になる場合があります。
n8nの強みと弱み
n8nの最大の強みは、Dockerやクラウドサーバーでセルフホストできる点です。 自社サーバーで運用すれば、オペレーション数の制限なしに使えます。 JavaScriptやPythonのコードノードを組み込んで複雑な処理を書けるため、エンジニアが多い環境では柔軟な自動化が可能です。
弱みは、セルフホストの場合にインフラ構築・運用の知識が必要な点です。 n8n Cloudという有料マネージドサービスも提供されていますが、コスト面ではMake.comと比較する必要があります。
選択の目安
以下の観点で選ぶのがおすすめです。
- すぐ始めたい、インフラ管理をしたくない → Make.com が向いている
- オペレーション数を気にせず高頻度で動かしたい、コードで処理を書きたい → n8n が向いている
- チームメンバー全員がノンエンジニア → Make.com が向いている
- セキュリティ要件が厳しく、自社サーバーに閉じておきたい → n8n が向いている
どちらも無料枠で試せるため、実際に動かしてみてから判断するのが最も確実な方法です。
無料プランのオペレーション管理とエラーハンドリング
オペレーション数を節約するコツ
Make.comの無料プランには月ごとのオペレーション上限があります。 (具体的な上限数はプランの改定により変わることがあるため、公式サイトの最新情報をご確認ください。)
月の途中でオペレーションが尽きると、その月の残りはシナリオが動かなくなるため注意が必要です。 オペレーション数を節約するための主な方法は以下のとおりです。
- フィルターを設定する :不要なデータはモジュールをスキップできるため、後続モジュールのオペレーション消費を抑えられる
- Intervalトリガーの頻度を調整する :5分間隔を15分間隔にするだけで消費量を3分の1に抑えられる
- 開発中はシナリオをOFFにする :テスト中はスイッチをOFFにしておき、Run once機能を使ってオペレーションを節約する
フィルターの使い方
モジュール間のアローの上にある「レンチアイコン」をクリックすると、フィルターを設定できます。
例えば「severity が high のときだけSlackに通知する」という条件を付ける場合は、以下のように設定します。
- Label :任意の名前(例:high-alert-only)
- Condition :
{{1.severity}}→ Equal to →high
この設定により、severity が high 以外のリクエストは、Slackモジュールを実行せずにシナリオが終了します。
Webhookモジュール自体は実行されてしまうためオペレーションは1消費しますが、Slackモジュール以降のオペレーションはゼロになります。
エラーハンドリングの基本
シナリオ実行中にエラーが発生すると、デフォルトではシナリオがその場で停止します。 本番運用を見据えるなら、エラーハンドリングをあらかじめ設定しておくことをおすすめします。
モジュールを右クリックすると「Add error handler」が表示されます。 主なエラーハンドラーの種類は以下のとおりです。
- Ignore :エラーが起きても処理を継続する
- Retry :指定した間隔・回数でリトライする(外部APIの一時的なエラーに有効)
- Rollback :エラー発生前の状態に戻す(複数ステップのトランザクション処理に使う)
- Break :エラーが起きたバンドル(1件のデータ)をエラーキューに移し、他のデータの処理は続行する
はじめのうちは Ignore か Retry を設定しておくだけで、シナリオが予期せず止まる場面を大幅に減らすことができます。 エラーキューに溜まったデータは、エラーの原因を修正した後に手動で再実行することも可能です。
まとめ:次のアクションへ
この記事では、Make.comの基本概念から出発し、アカウント作成・Webhookトリガー設定・データ整形・Slack通知という4ステップの初シナリオを動かすところまで解説しました。
ポイントを振り返ります。
- シナリオ・モジュール・オペレーション・コネクション の4概念を押さえれば、UIの意味が理解しやすくなる
- Webhookシナリオは、Make.comが発行するURLを外部システムのPOST送信先に指定するだけで連携できる
{{モジュール番号.フィールド名}}の記法でモジュール間のデータを受け渡す- Make.com はブラウザ完結・インフラ不要が最大の強み、n8nはセルフホストとコードの柔軟性が強み
- 無料プランでは、フィルターやトリガー頻度の調整でオペレーション数を節約できる
基本のシナリオが動いたら、次はぜひ以下の応用記事にも挑戦してみてください。
「まず動かしてみる」ことが自動化習得の最短ルートです。 今日紹介したWebhook×Slackのシナリオを自分のワークスペースで実際に動かし、慣れてきたらトリガーやアクションを別のモジュールに置き換えながら、自分の業務に合った自動化を育てていきましょう。